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ネット通販モール「天猫商城」で成功するコツは?

上海齋優商務諮訊有限公司(上海TU)パートナー 久能克也 氏


――中国ネットショッピングに参入したものの、あまり成果の出ていない日系企業も多いと聞きます。そういう日系企業はどこで間違えているのでしょうか?
 
いろいろあります(笑)。一番多い過ちが「しっかり準備をする前に、戦を始めてしまう」ということです。

 中国人は用心深いので、実際に商品を購入する前に、必ず「事前チェック」を行います。その厳しい事前チェックを全てパスして、初めて購入対象商品となるのです。ネット店舗がお金をつぎ込んで広告を打ち集客に成功したとしても、その事前チェックの段階で1つでも「?」となると、中国人客から見放され、購入には至らないのです。

――中国人は、どのような「事前チェック」をするのでしょうか?

 まずは「ネット店舗の販売実績」をチェックします。中国のネットショッピング大手「天猫(旧:淘宝商城)」では、各店舗が過去に販売した商品ごとの販売数量が公開されていますので、「過去にどれくらい商品を販売したことがある店なのか」が一目瞭然です。「商品をたくさん販売している店は、他の客にも選ばれている店なので安心だけど、商品があまり売れていない店は、売れていないなりの理由があるはずなので利用しない方がよい」となるのです。

 天猫商城に初めて出店し販売を開始する場合には、当然、販売実績はありませんので、いくら広告費を使って集客をしても、客は買ってくれません。
 ではどうするか。

 セールやサンプル配布などと平行し、各カテゴリーに存在する商品知識に長け影響力のあるパワーブロガーに使用記事を書いてもらうなどの地味な努力で販売件数を重ねることが重要です。場合によっては自社自身で購入して販売実績を増やしていくケースも中国ではよくあります。

――販売実績以外にも、中国人客が事前にチェックすることはありますか?

 買いたい商品の「クチコミ」もチェックします。中国人は、(過去に購入してその商品の価値を分かっている場合を除き)商品を買う前に、ほぼ確実にその商品の「クチコミ」をネットで調べます。

 天猫商城でも同じ商品を購入した人のコメントや評価を見ることできますが、それだけでなく百度知道(中国版Wikipedia)、ブログ、SNS、微博(中国版Twitter)に書いてあるその商品に関する口コミ情報を検索して、購入前に、本当に買う価値のある商品なのかを調べるのです(天猫商城の商品購入者のコメントは、店舗自身がサクラとして購入して書いたコメントの可能性があるのであまり信用されません)。

 したがって店舗側は、商品を販売する前に、百度知道に商品の情報を登録したり、ネットで商品名を検索したときに、ブログ、SNS、微博で良いクチコミがヒットするように準備しなければならないのです。

――販売実績とクチコミ以外にも、準備すべきことはありますか?

 まだあります(笑)。「DSR(Detail Seller Rating)」を4.7以上にすることです。

 天猫商城では、「商品発送スピード」、「店舗サービス」、「実際に送られてくる商品と、店舗での商品説明内容が一致していること」という3つの軸でネット店舗が評価されます。天猫商城で商品を購入した客が、その購入経験に基づき、3つの評価項目をそれぞれ5段階で評価するのです。そして全ての客の評価の平均値が店舗のDSRとなります。そして客が購入店舗を選ぶ際には、必ずこのDSRを参考にするので、天猫商城に出店している店舗にとってDSRはとても重要です。

 一般的には3項目とも4.6以上でないと買ってもらえないと言われています。このDSRが4.6を割リ込むと、天猫商城がネット上で開催するイベントに参加できないとか、天猫商城上で広告が打ちにくくなる等、様々なペナルティが天猫商城から課されてしまうからです。

――5段階評価で4.7以上というのは、かなり大変そうですね。

 その通りです。悪い評価をつけた客が入れば、こちらから連絡を取り、その理由を聞いた上で、場合によってはその埋め合わせをすることで、評価をよいものに修正してもらう必要もあります。

 また競合店やクレーム常習犯が、わざと悪評をつけることもあります。こういう悪意をもって意図的に悪評をする人への対応は大変です。ただし天猫商城では、売り手も買い手に対して評価をつけることができるようになっていて(※客も、購入後にネット店舗から評価され、ハート→ダイヤ→王冠とステップアップしていきます)、「評価の悪い客には、商品は売らない」ということも可能となっています。
また、DSR 3項目の評価を全部5にしてくれた客には10元の割引クーポンなどをプレゼントするという店舗もあります。

 ちなみに、弊社がサポートしている天猫商城の店舗のDSRは、大体4.8~4.9を維持しています。

 このように、中国のネットショッピングでは販売を始める前の「事前準備」がとても重要です。事前準備なしで、集客しても「穴の開いたザルに水を注ぐ」結果となり、全く結果が出ないでしょう。中国では、大きなプラスを狙いに行く前に、「まずマイナス要因を消すこと」が重要なのです。

――マイナス要因を消して準備OKとなった後、知名度ゼロの状況から、どのように集客して売上を上げていくのでしょうか?

 天猫商城の場合、店舗オープン時の集客には、天猫商城上の「リスティング広告(検索結果の下に表示される広告)」を利用します。中国ネットショッピングでは、初年度は(期待)売上の20%~30%程度を広告費に充てるのが一般的です。

 中国に初進出の日系企業が天猫商城に出店するケースでは、販売する商品および価格では競合商品がないばかりか、マーケット自体が存在しないことがほとんどです。しかも、最初は会社名も商品名も中国では知られていないので「日本ブランドです」ということだけで勝負をするしかないのです。中国人の中でも一定規模存在する「日本商品オタク層」をターゲットにしたり、リスティング広告や、割引、プレゼントなどを駆使して地道に実績を積むしかありません。

 そして次のステップとして、ヒット商品、例えば、通常平均月20~30個売れればよいというカテゴリーで1000個売れる商品を作っていくのです。

――なぜヒット商品が必要なのでしょうか?

 ヒット商品がでれば、検索結果の上位表示が増え、店舗を訪問してくれる客が増えるからです。また販売実績数の多いヒット商品がある店舗では、客も安心して購入してくれるからです。

 そして客がヒット商品の購入を決めたときに、「どうせこの商品を(送料自己負担で)購入するのであれば、(追加送料のかからない範囲で)他にも商品も購入しておくか」と思うように仕向けて、クロスセリングに持っていくのが常道です。客とチャットをしながら、そういうことも積極的に勧めていきます。集客のために利益度外視の価格で販売する「集客商品」と、クロスセルで利益を稼ぐ「利益商品」の2つが必要です。

――天猫商城でも「チャット」が重要な役割を果たすのですね。

 以前は、タオバオ(C2C)や天猫商城(B2C)では、まず店舗スタッフとチャットで連絡し、商品内容や在庫状況等を確認した後に商品を購入するケースが多かったのですが、最近はチャットの利用率は30%程度に減っています。またチャットを利用する人には若い女性が多く、男性はあまりチャットをやらないという傾向があります。

 そして、店舗にとってチャットが重要なのは、商品販売時よりもむしろ、クレーム対応などのアフターフォローの場合です。クレームへの対応力が、店舗のDSRに大きく影響するからです。例えば化粧品を購入したお客様から「化粧品が肌に合わない」というクレームがあったとします。ダメなスタッフだと、「HP上に、商品は肌に合わないこともありますと書いてあるのでこちらの責任ではありません」と強気に回答してしまいます。そんな対応をすると、当然、客は「とんでもない店だ」と怒り、DSRの評価をゼロにされてしまうからです。

――他に、何かコツはありますか?

「いかに値引きせずに売るか」が、中国のネット販売では重要なテーマです。現時点では、中国人がネットで買い物をする一番大きな理由は、「価格の安さ」です。そのため、店舗側も「値引き」に走っていて、あまり儲からない店舗が続出となっているのが現状です。

 また、一度値引き販売をしてしまうと、「この店はセールをやる店だ」というレッテルを貼られてしまい、定価では商品が売れなくなってしまいます。天猫商城では、各ネット店舗で過去に販売された商品およびその価格が公開されていますので、一度でも値引き販売したことがあれば、お客様に分かってしまいます。そして、それを知ったお客様は「今ではなく、セールのときに買おう」と考え定価では買ってくれなくなってしまうのです。

 そんな中で、日本ブランドを含む海外ブランドの化粧品を天猫で販売しているUNQは、値下げせず販売できている良い例でしょう。ニベア等比較的有名ブランドの洗顔フォームが30元程度で売られているなか、UNQでは50~60元の資生堂洗顔フォームを値下げせずに月数万本単位で販売しています。UNQでは、購入者にノベルティ等を提供することで、割引せずに定価で販売できているようです。

――日本で楽天が活用しているメールマガジンなどは、天猫商城では利用できないのでしょうか?

 天猫商城としては楽天のようなメールマガジンは発行していないので、やるとしたらネット店舗単独で行うことになります。しかしながら、ネット店舗側で分かるお客様情報は、配送に必要な情報のみです。例えば携帯番号は全員分かるけど、メールアドレスまで分かる客は半分以下だったりします。また顧客セグメンテーション等に必要な「性別」や「年齢」なども分からないのが現状です。

――天猫商城に出店しているネット店舗は、天猫商城にどのくらい売上手数料を払うのでしょうか?

 天猫商城の売上手数料は、売上の2~5%で(商品カテゴリーによる)、売上がたとえゼロでも、支払うミニマム手数料の設定もあります。その他に、例えば靴を扱う場合、天猫商城に出店する店舗は年6万元の保証金を天猫商城に預ける必要があります。天猫商城に預けた保証金は、店舗の年間売上が18万元を超えると半分の3万元が店舗に返却され、年間売上60万元を超えると残りの3万元も店舗に返却されるようになっています。また天猫商城は、客からサービス、品質に関するクレームがあった場合、店舗に断りなく店舗が預けた保証金から客に購入代金を返却できる仕組みになっています。

――今度は、中国のネットショッピング市場全体について伺います。中国のネットショッピング市場は今後も成長するのでしょうか?

 2011年末に中国でのネット利用者数は5億人を超え、ネットショッピング利用者は、その4割にあたる約2億人に達しています。

 CNNIC(China Internet Network Information Center)から発表された年齢別のネットショッピング普及率データを見ると、全ての年齢層において、中国のネット普及率はアメリカと比べて、まだ低いことが分かります。その意味でも中国のネットショッピングは、今後もまだまだ成長が期待できるはずです。

実際、iResearch社のデータによると2011年の中国ネットショッピング市場規模は、前年比67.8%増の7735億元、中国小売販売総額の4.3%を占めています。

――中国では、2年前と同じようにC2CがEコマースの大半を占めていますか?

 徐々に、C2CからB2Cにシフトしています。2011年はB2Cのシェアは23.2%で、今後だんだんC2CからB2Cにシフトしていく見通しです。
そしてC2Cでは、タオバオ(淘宝網)が相変わらず90%以上の圧倒的なシェアを占めていますが、B2Cのシェアは、天猫商城が50%強を占めているものの、京東商城など2番手以下が猛烈に追い上げをかけています。

――天猫商城以外のB2Cネットショッピングインフラの利用についてはどう思いますか?

 最近は、天猫商城を追いかける「京東商城」や「アマゾン」も市場シェア拡大に力を入れていますし、両社とも自社以外の企業が自社インフラを利用する場合のハードルを下げています。例えば、アマゾンはこれまでは自社物流への拘りがあり、アマゾンに出店したい企業は(直接客に商品を配送してはダメで)商品をアマゾンの倉庫に納入して、アマゾンが客に商品を配送することにしていました。しかもアマゾンは倉庫での保管料金を取っていました。ですが、今はそういった企業が直接客に配送することもできるようになっています。また最近はネットスーパーの1号店も第三者にインフラを開放していますので、今後中国でネット販売をする場合に、天猫商城以外の選択肢も出てくる可能性があります。
ただ、京東商城やアマゾンは、まだ自社以外の出店企業が集客のために利用できるリスティング広告などの仕組みが整っていません。現時点では、いろいろノウハウが蓄積されている天猫商城から始めるのがよいと思います。

――モバイルコマースはどうですか?

 2011年末時点で、モバイルでのネットショッピング利用者は携帯保有者の6.6%に留まっています。中国ではまだPCでのネットショッピングの方が主流です。

――最後に中国ネットショッピングで商品を販売したいと考えている日系企業に一言アドバイスをお願いします。

 天猫商城は、まじめにやれば必ず結果が出る販売チャネルです。そのためには、商品在庫も含めて1000万円程度の投資が最初に必要です。その投資でまず初年度売上1000万円達成を目指します。そして、その次のステップとしてヒット商品を複数作り、売上3000万円を目指すという風に進めるのがよいと思います。

 また、ヒット商品を作っていくためには、商品を中国向けにカスタマイズすることも必要です。通常、日本で販売されている商品は値段が(中国で販売されている代替製品と比べて)高すぎるからです。そういう意味では、卸売業、小売業よりも、商品を中国向けにカスタマイズしやすい「メーカー」の方が、中国では成功する確率が高いかもしれません。

(ダイヤモンドオンライン「リアル中国ビジネス」2012/5/15掲載

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